洋菓子店の現場から

「洋菓子店の現場から」は、ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋を営む中で、実際に起きていること、感じたこと、考えたことを綴るコラムです。

原材料や包装資材のこと、お菓子づくりのこと、働く人のこと、そして店を続けていく中での小さな工夫や迷い。

きれいにまとめすぎず、洋菓子店の現場で起きていることを、できるだけそのままお伝えします。

洋菓子店の倒産が過去最多。原材料高騰の現場で感じていること

兵庫県芦屋市の洋菓子店ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋の店舗

ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋。2009年1月から芦屋で洋菓子店を営んでいます。

洋菓子店の倒産が過去最多になったというニュースを見ました。

私自身、店を経営しているので、決して他人事ではありません。

でも正直に言えば、驚きよりも「そうだろうな」という感覚の方が強くありました。

「そうだろうな」と思ったのが、最初の感想でした

2025年度に発生した「洋菓子店」の倒産は65件に上り、前年度の51件から約3割増加し、2年連続で過去最多を更新したそうです。

原材料価格の高騰に加え、コンビニスイーツなどとの競争も激しくなり、特に値上げが難しい中価格帯の洋菓子店で苦境が鮮明になっている、という内容でした。

※帝国データバンク公表資料を参照

「まぁ、そうだろうな。」

2009年1月から洋菓子店を運営していますが、ニュースを見た時の率直な感想です。

こういうニュースになるよりかなり前から、日々現場で働いている私たちは、予兆というか、少しずつ変化を感じていたからです。

上がっていないものを探す方が難しくなりました

「物価高」が続き、さまざまなものの値上げが進んでいることは、皆さんも日々感じていると思います。

洋菓子店の現場にいると、今では「上がっていないものを探す方が難しい」と感じるほどです。

最近になって「物価高」という言葉をよく聞くようになりましたが、私たちの仕入れでは、それより以前から兆候がありました。

以前に比べて、海外での需要がかなり強くなったと感じます。

洋菓子で使う原材料の多くは輸入品です。

ピスタチオはアメリカ、スペイン、トルコ、イタリアなど。 アーモンドもアメリカ、スペイン、イタリアなどから輸入されています。

仕入先の担当者からも、海外需要が強く、日本が買い負けるケースが増えているという話を聞くようになりました。

商売ですから、高く売れるところへ商品が流れるのは自然なことです。

そこに為替やコロナ禍など、さまざまな要因が重なりました。

ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋で実際に使用している業務用チョコレート

実際に店で使用しているチョコレート。仕入価格は数年前と比べて大きく上がりました。

海外からの輸入に頼る原材料は、ものによっては1.5倍から2倍ほどに値上がりしています。

それまで1kg3000円程で仕入れていたチョコレートが、今では5000円から6000円程になっています。

さらに国内の賃上げやエネルギー価格など、さまざまな要因が重なり、仕入価格は上がり続けています。

原材料だけではありません。箱も袋も上がっています

値上がりしているのは、お菓子の材料だけではありません。

プラスチック製品や緩衝材、紙箱、貼り箱、仕切り、紙袋。

お客様からはあまり見えない部分ですが、包装資材にも大きなコストがかかっています。

ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋で使用しているオリジナル紙袋

店で使用している紙袋。紙袋も大幅な値上がりが続いています。

私たちのお店で使っている紙袋も、以前と比較すると価格は約2.5倍になりました。

紙袋1種類だけで、年間約160万円のコスト増です。

紙袋1種類だけで、この影響です。

これ以外にも、紙箱、貼り箱、仕切り、別サイズの紙袋などがあります。

「値上げのお知らせです。」
「また、値上げのお知らせです。」

もう聞き飽きるくらい、「値上げのご案内」が届きます。

値上げすれば解決する、というほど単純ではありません

「じゃあ、値上げしたら?」

もちろん、必要な値上げは進めています。

でも、

「じゃあ、価格を2倍にしますのでよろしくお願いします。」

「じゃあ、ケーキ1個1500円でお願いします!」

と言って、それで今までと同じように売れていくのか。

そこが問題です。

お客様の生活にも当然、さまざまな値上げの影響があります。

ですから私たちとしては、必要な値上げはする。でも、できるだけ最小限にとどめたい。

そう考えています。

材料を変える前に、店のやり方を見直す

では、どうするのか。

結局は、「工夫」するしかありません。

私たちが実際に行っている工夫を、いくつかご紹介します。

紙袋は、問屋からメーカーへ

紙袋では、以前は問屋さんを通して仕入れていました。

現在は製造メーカーと直接取引をし、メーカーの海外工場で製造してもらっています。

以前は、

お店 → 問屋 → メーカー

という流れでした。

現在は、

お店 → メーカー

です。

中間の取引を減らし、仕入方法そのものを変えました。

それでも以前と比べれば20%ほどコストは上がっていますが、2.5倍になるよりはかなり抑えることができました。

ケーキに使う「苺」も変えました

苺も以前は一般的な市場流通を通して仕入れていました。

流れとしては、

農家さん → JA・出荷団体 → 卸売業者 → 仲卸 → お店

という形です。

現在は、

農家さん → お店

です。

一般的な流通では、収穫してからお店に届くまで4日から5日ほどかかることがあります。

そのため、流通に耐えられるように、まだ熟していない状態で収穫する必要があります。

見た目は赤くなっていても、十分に糖度や香りがのっていないことがあります。

さらに、クリスマス時期など需要が集中する時期には、価格が普段の3倍から4倍になることもあります。

今は農家さんから直接仕入れているので、中間マージンはありません。

そして何より、完熟した状態の苺を仕入れることができます。

もちろん、農家さんは配達してくれません。

そのため、私が毎日農家さんまで行って仕入れます。

手間はかかります。

でも、その分、香りも風味も糖度ものった良い苺を仕入れることができます。

こういう地道な工夫を、一つひとつ重ねています。

私たちが工夫するときに考えているのは、単純な「コスト削減」だけではありません。

まず、お客様にとってプラスになるか。

次に、働いてくれているスタッフにとっても良いことか。

そのうえで、結果としてコストも下がる。

そんな形が一番良いと思っています。

「外注」も使います

外注も積極的に活用しています。

例えば、箱折りです。

お店で使用する紙箱は、近隣の社会福祉事業団の方々に折っていただいています。

自店舗では箱折り作業を行いません。

「外注すると高くなるのでは?」と思われるかもしれません。

でも実際には、自社のスタッフが長い時間を使って箱を折る方が、結果としてコストは高くなります。

箱折りは意外と時間がかかります。

その時間を減らすことで、働いてくれているスタッフの負担を減らしながら、コストも抑える。

これも一つの工夫です。

あえて「在庫」を増やすこともあります

「えっ?」

と思われる方もいるかもしれません。

在庫は「減らす」のでは?と思いますよね。

在庫を増やすと、当然、現金は在庫に変わります。

資金繰りだけを考えれば、在庫は少ない方が楽です。

ただ、1回あたりの発注数量を増やすことで、1個あたりの仕入単価を下げられるものもあります。

紙袋などは、その代表的な例です。

例えば、分かりやすくするための仮の数字ですが、

  • 1000枚発注すると、1枚180円
  • 5000枚発注すると、1枚80円
  • 10000枚発注すると、1枚60円

というように、発注数量が増えるほど1枚あたりの価格が下がるケースがあります。

洋菓子店で保管している包装資材や紙箱などの在庫

発注量を増やせば単価は下がります。その代わり、店側が在庫と資金のリスクを持つことになります。

当然ですが、発注数量を増やせば支払う金額も大きくなります。

在庫も増えます。

つまり、お店側が在庫と資金のリスクを負うということです。

私たちのような1店舗だけの小さなお店では、1000枚仕入れるだけでも「多いな」と感じることがあります。

それでも、できるところでは発注方法を変え、少しずつ仕入単価を抑える工夫をしています。

結局、長く働いてもらえる職場をつくる方が良い

ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋の厨房で働くパティシエの様子

日々の厨房の様子。長く働いてもらえる職場をつくることも、私たちなりの大切な「工夫」の一つです。

もう一つ、私たちが大切にしていることがあります。

それは、今働いてくれている人たちに、できるだけ長く働いてもらうことです。

当店の社員は15年以上勤務しています。

パート・アルバイトの方も、1年から2年と短い方はいらっしゃいますが、ほとんどの方が5年以上、長い方では8年以上勤務してくれています。

人が辞めれば、また採用し、仕事を一から覚えてもらわなければなりません。

採用にもお金がかかりますし、教える側にも時間がかかります。

先日、求人サイトの営業担当の方に聞いたところ、正社員1名を採用するためのコストは、月給1か月分くらいが平均的だそうです。

月給30万円なら、採用コストも30万円ほど。

パート・アルバイトの求人でも、先日提案いただいたものは1か月15万円でした。

「それなら、今働いてくれている人たちに使った方がいいんじゃないか」

こういう費用を見るたびに、私はそう思います。

働きやすい労働時間にする。

少しでも高い報酬を支払う。

円滑に仕事ができる人間関係をつくる。

もちろん、全部簡単にできることではありません。

それでも、採用しては辞め、また採用することを繰り返すより、今いる人たちに長く働いてもらえる職場をつくる方が、結果としてお店にとっても良いと考えています。

これも、私たちなりの「工夫」の一つです。

店を続けるために、まだまだ「工夫」できることはある

ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋で使用する焼き菓子用の箱が多数並ぶ様子

一つひとつは小さなことでも、日々の積み重ねが店を支えています。

今回、洋菓子店の倒産が過去最多を更新したというニュースを見て、私なりに現場で感じていることを書いてみました。

原材料が上がる。

包装資材も上がる。

人件費も上がる。

だからといって、すべてをそのまま商品の価格に乗せることもできません。

結局は、一つひとつ工夫していくしかありません。

問屋さんを通していたものを、メーカーさんから直接仕入れてみる。

市場から仕入れていた苺を、農家さんから直接仕入れてみる。

自分たちでやっていた仕事を、あえて外部の方にお願いしてみる。

時には在庫を増やして、一度の発注量を増やす。

そして、今働いてくれている人たちに、できるだけ長く働いてもらえる環境をつくる。

一つひとつを見ると、どれも派手なことではありません。

でも、小さな洋菓子店を続けていくには、こういう地道な工夫の積み重ねが大事なんだと思っています。

これが正解なのかは、まだ分かりません。

もっと良いやり方があるかもしれません。

私自身も、まだまだ勉強して、経営者として成長していかないといけないと思っています。

私が成長しないと、お客様にも、働いていただいている従業員の皆さんにも迷惑をかけることになります。

「これが正解」というものがあるわけではありません。

やってみて、ダメならまた変える。

そうやって、お菓子の品質を落とさず、働いてくれている人たちにも無理をさせず、店を続けていける方法をこれからも考えていきたいと思っています。

ということで、今回は以上です。

ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋のオフィシャルサイト紹介画像

オフィシャルサイトでは、実店舗の情報や、私たちのお店の創業からの経緯、大切にしている考え方などをお伝えしています。ぜひ一度お目通しください。

オフィシャルサイトはこちら
ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋オンラインショップの焼き菓子ギフト紹介画像

オンラインショップでは、当店人気No.1の和三盆リングサブレをはじめとする焼菓子ギフトをお取り寄せいただけます。

オンラインショップTOPページ